【資産防衛】円安だからといって喜んでばかりはいられない

 

円高に対するアレルギーが強い日本人

昨年の秋口以来、基調としては円安が続いている。8月12日現在、1ドル=96円台で、一時期の103円台に比べれば円高だが、昨年8月は78円台だったことを考えると、どこから見ても円安水準だ。

 

さて、円安は喜ばしいことなのだろうか。

 

日本人は、円高に対するアレルギーが強い。自国通貨が高く評価されているのに、円高が進むと「円高不況だ」という声がどこからともなく上がり、株価は下落する。確かに、円高が進めば日本の輸出企業の業績悪化懸念が強まる。日本の中小企業は、大手自動車メーカーや大手家電メーカーなどの輸出産業に依存している面があると共に、この手の産業は裾野が非常に広いため、円高による収益悪化の影響は、当の輸出産業のみに留まらない。その意味では、日本経済にとってネガティブ要因ではある。

 

また、個人資産に関していえば、円高によって外貨建て資産の円建て評価額は減額する。言うまでもなく、為替差損を被るからだ。その意味では、やはり円安万歳ということなのだろう。

 

結局は日本国内の物価上昇につながる円安

でも、よく考えてもらいたい。円安というのは、円の価値が国際的に減額することを意味する。

 

1ドル=76円から103円まで円安が進む局面で、何が起こったのか。これは、今まで76円を出せば1ドルを買うことができたのが、103円を出さないと買えないということだ。それだけ、円の購買力が下がったことになる。

 

日本は、食糧や資源・エネルギーの多くを、海外からの輸入に頼っている。輸入に用いられる決済通貨は、米ドルが中心だ。ということは、これまで1万ドルのモノを輸入するのに、円ベースで76万円を払えばよかったのが、103万円も払わないと輸入できないことになる。当然、海外から輸入して製品を作っている企業などは、輸入コストが上昇した分を、日本国内で消費者に販売する際の製品価格に転嫁することになる。最終的に、円安は日本国内の物価上昇につながっていく。

 

そのような時、すべての資産を円建てで保有していたとしたら、どうなるだろうか。円の購買力はどんどん下がる。つまり、保有している円建て資産の価値は、目減りしていくことになる。

 

1ドル=76円から103円まで円安が進んだということは、円は米ドルに対して、26.21%も値下がりしたことを意味する。個人金融資産1571兆円のうち、54%を占める848兆円が現預金ということは、この円安によって、実に222兆円もの価値が目減りしたことになる。資産防衛を考えている人は、この事実に対して危機感を覚えなければならない。

 

こうしたリスクを多少なりとも軽減させるためには、自らの保有資産の一部に外貨建て資産を持つようにすることだ。全額を外貨建て金融資産にするのは非現実的だが、20%、あるいは30%程度を外貨で保有するだけで、円安で円資産を目減りさせるリスクを軽減させることができる。

 

 

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