【事業承継】自社株式の一括生前贈与と相続税の仮払い(2)

 

相続時精算課税制度なら2500万円まで非課税

 

相続時精算課税制度の魅力は、何といっても大型の非課税枠です。

 

暦年贈与が毎年110万円なのに対し、相続時精算課税制度による贈与は累計で2500万円まで贈与税がかかりません。つまり、自社株対策を行ったり、リーマンショックのように経済環境が悪化したりして、自社の株価が大きく下がっているときに狙いをつけ、相続時精算課税制度を利用して生前贈与すれば、非課税枠内なら贈与税を払わずに贈与することができます。

 

非課税枠の2500万円を超えた分については、一律20%の贈与税が課税されます。これも2500万円の非課税枠同様、魅力的な税率といえます。20%程度の税率なら、ある程度自社株式を積み増して、贈与税を納税してもいいというオーナー社長は多いようです。

 

生前贈与で納めた贈与税は、相続が発生したときにかかる相続税が生前贈与した時点の贈与税額より多かったときには差額の「納付」、少なかったときは「還付」になります。

 

ただし、自社株価が高騰して高止まりの状態のときは、税率が20%とはいえ全株贈与するためには多額な納税資金が必要になります。

 

こういう状況のときは、できる範囲で自社株式を生前贈与しておき、残りの株価を最大限下げたうえで一気に贈与するのがいいでしょう。

 

また、生前贈与であれば、オーナー社長が自らの意思で多額の株式を、確実に後継者に引き継がせることができます。

 

相続による遺産分割の争いや株式の拡散を防ぐ意味からも、相続時精算課税制度は事業承継に多くのメリットをもたらしてくれます。

 

自社株式の評価額は贈与時の価額が基準

 

株式承継にとって相続時精算課税制度のもう一つの大きなメリットは、自社株価算定の基準が、相続時ではなく贈与時の数値が使われることです。

 

例えば、株式を贈与したときの株価が1000円で、その後会社の発展とともに株価が急騰し、1株2万円になった場合でも、相続時の課税評価は贈与時の1000円をベースに算定します。

 

コツコツと暦年贈与を続けるとともに、株価を引き下げ、後継者教育を遂行していき、ここぞというタイミングで、この相続時精算課税制度を使って、一気に自社株を後継者に渡す。

 

つまり暦年贈与+相続時精算課税制度という組み合わせで、税負担を軽減しつつ事業承継を完結することができるわけです。

 

 

(その1)に戻る。

syoei_sjigyousyoukeiこの記事はGTAC編著
『オーナー社長のための税金ゼロの事業承継』
(2012、幻冬舎メディアコンサルティング)
より転載したものです。

 

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