【香港事情】 財政黒字で税負担率を一段と下げる「香港」

 

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香港は、「小さな政府」を維持し、財政も黒字を維持している世界でも数少ない国・独立行政区のひとつです。

 

2014/15年度(香港の財政年度は4月~3月です)の財政黒字は、当初予想の91億ドルの黒字に対して、638億ドルの黒字となりました。好調な経済を主な背景として税収が増加、経常勘定の黒字が725億ドルにも達したことが主因です。2015/16年度も368億ドルの黒字が予想されています。

 

2014/15年度の大幅な黒字を受けて、香港政府は、個人所得課税の非課税枠の増加や扶養子供控除の増額、事業税の軽減(16.5%→15%)を還元策として打ち出しました。香港は世界でも税負担率が最も低い地域のひとつですが、今財政年度は、一段と税負担率が下がるということになります。

 

面白いのは、昨年「オキュパイ・セントラル」デモで影響を受けたタクシーやミニバスなどにも、その車両検査のライセンス更新検査料を免除したり、旅行代理店やホテル・レストランのライセンス料も6か月分免除する政策も打ち出されていることです。デモで、割を食ってしまった人々への配慮ということでしょう。

 

金融面での施策で見ると、香港政府が世界の金融センターとしての地位をより強固にする策が打ち出されています。企業グループが金融財政拠点を置く場合に事業所得税から利息を控除すること、特定の財務関連業務に対する事業所得税を50%軽減することなどがその具体策で、これらにより、多国籍企業や中国本土企業が、香港に金融財務拠点を置くことを後押しする狙いです。

 

また、中国当局と連携して、人民元適格外国機関投資家「RQFII」の投資割り当て額を増加させています。これにより、香港のオフショア人民元業務のグローバル拠点としての地位をより強化しようとする意図がうかがえます。

 

昨年11月から始まった、「香港-上海ストックコネクト」による香港株と上海A株の相互開放(ただし当面は一日あたりの取引上限あり)も、既に両株式市場の株価を押し上げ、活性化に繋がっているとの評価が出てきています。

 

<執筆>

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB)COO 長谷川 建一氏

 

<執筆者プロフィール>

京都大学卒、MBA(神戸大学)。

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。

2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。

2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOを務める。

 

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