【海外活用】カリブのタックス・ヘイブン、市民権「購入」を厳格化
カリブ海に浮かぶ小国で、タックス・ヘイブンの一つとされるセントクリストファー・ネイビス。これまで同国の市民権を「購入」することができましたが、今後はその条件が引き上げられる予定であるとのことです。Bloombergが「セントクリストファー・ネイビスの市民権の購入難易度は今後さらに高くなる(原題:Buying Your St. Kitts Citizenship May Get More Expensive Soon)」という記事を配信していますので、ご紹介します。
〇同国の経済を支える一方、税金逃れの温床にも
人口5万1000人と、南北アメリカでもっとも小さな独立国であるセントクリストファー・ネイビスは、犯罪歴を持つ人々が市民権を「購入」することを防止するために、市民権購入に必要とされる25万ドルの投資費用を引き上げる計画があることを表明しました。これにともない、すでに購入された市民権に関しても、その一部は取り消しされる可能性があるとのことです。
「特定の人を排除し、経済的に利益のある人物をより受け入れるためには、投資費用の引き上げは有効な手段である」とティモシー・ハリス首相は述べています。
セントクリストファー・ネイビスの投資による市民権付与プログラムは1984年に始まり、金融危機を乗り切ることに貢献した反面、国際的な批判も高まっています。たとえば、カナダは同国市民に認めていたビザなし渡航を取り消しました。さらにアメリカは、イラン国民が制裁を逃れるためにセントクリストファー・ネイビスのプログラムを利用しているとして、勧告を出しています。
7億ドル超の経済規模というセントクリストファー&ネイビスに、このプログラムによって2013年では7400万ドルという巨額の資金が流入しました。またIMFは2015から2017年では毎年、約3700万ドルの収益となることを予測しています。
セントクリストファー・ネイビスによる成功は、キプロスやグレナダを刺激し、両国も似たような制度の導入を検討しているそうです。市民権の購入者は、ビザなしでの渡航、政情不安からの逃避、そして税金逃れのためにこのプログラムを利用しています。
市民権を取得する場合、購入者は島に住むことはおろか、訪れる必要さえなく、プログラムを案内する政府のホームページの「よくある質問」の最初の項は「セントクリストファー・ネイビスってどこにあるの?」というものです。
政府の産業振興基金に25万ドルを支払うか、特定の不動産に40万ドル以上を投資することで、市民権は獲得できます。このプログラムがもたらす潤沢な資金によって、ヒルトンが同国に建設している高級リゾート「ペリカン・ベイ」などの大規模な開発が可能になったということです。
しかし国際的な批判を受け入れて、2013年には政府はイランとアフガニスタンからの申し込みを停止しました。また近日中にアメリカやカナダなどから代表を招いて、市民権プログラムの基準を定める国際会議を開催するとのことです。
海外活用コラム 執筆:GTAC(2015年6月16日付)
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