【海外活用】中国は通貨の交換性より国際化を優先

2015年6月24日

 

【連載コラム】急激に加速する人民元の「国際化」

       その要因を探る(第1回)

 

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今年下半期に予定されているIMFの特別引出権(SDR)構成通貨の見直しを前に、昨年から人民元の国際化が急激に進んでいます。人民元を使用する機会は急増し、各国が人民元を準備通貨に組み入れ始めています。本連載ではさまざまな要因から中国が狙う人民元の国際化を解説していきます。
今回は、2022年頃までと見込まれる完全交換性の実現に先立ち、中国が進める国際化を優先する動きを見ていきます。


 

国際化を進めるうえでの政策面の鍵は、資本取引の自由化、通貨の完全交換性実現です。ただ、これらと国際化の概念は別のものです。

 

通貨に完全交換性がなくても、ある程度は国際化を進めることができます。一方、完全交換性があっても、必ずしも国際化が進むとは限りません。しかし最終的には、資本取引が自由化され、通貨が自由な交換性を持つことが国際化を十分に進めるために必要な条件となります。

 

通常は、通貨に交換性を持たせた後に国際化を図りますが、中国の場合、むしろ完全交換性実現に先立ち、人民元の国際化を進めています。

 

理論的に、金融政策の独立性、資本の自由な移動、固定為替相場の3つは同時には実現できないと言われています。中国は金融政策の独立性を維持しながら、人民元相場の安定を確保するため、資本取引の規制を残しました。

 

一方で、人民元を変動相場にする場合に備え、中国貿易企業の為替リスクを軽減するため、人民元の国際取引での使用をできるだけ拡大しておきたいという狙いから国際化を進めてきたのです。

 

そうした背景から、中国政府は当初、人民元を使用する地域を拡大するという意味で、人民元の「区域化」と呼んでいました。「国際化」という文言を公式に明確な形で使用したのは、実は昨年12月の経済工作会議(党と国務院が共催で毎年末開催、翌年の経済運営を議論する重要会議)が最初です(外貨管理局幹部)。しかし、交換性を実現しないまま、さらなる国際化を進めることには限界があります。

 

一般的な通貨の交換性実現のプロセスは、次の通りです。

 

経常取引の自由化

    ↓

経常取引での当該通貨使用の自由化(経常勘定での交換性実現)

    ↓

資本取引の自由化

    ↓

資本取引での当該通貨使用の自由化(資本勘定での交換性実現)

    ↓

当該通貨の完全交換性実現

 

資本取引の自由化は、通常は、直接投資からポートフォリオ(金融・証券)投資、ローン、また、資金流入から流出、長期から短期の順序で自由化します。

 

中国もこの点では同様です。経常取引については1996年にIMF協定8条に基づき自由化し、2011年に経常勘定の交換性を実現しました。しかし資本取引については段階的に自由化していく途上にあり、いまだに人民元は完全交換性を持ちません。

 

kaigaicolumn057_2中国当局は、公式には具体的なスケジュールを示していませんが、2012年、人民銀行(中央銀行)の研究チームが、非公式な資本取引自由化工程表を発表し、自由化が5年から10年の間で、3つの段階を経て完了するとの見通しが示されています。早くて17年、遅くとも22年頃には資本取引自由化が完了、人民元交換性が実現し、それが人民元の国際化を加速させることになると考えられています。

 

 

次回は通貨の機能から見た国際化の進展を解説します。

 

<執筆>Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB)独立取締役 金森俊樹

 

<執筆者プロフィール>

1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。
2015年、NWBの独立取締役に就任。一橋大学卒。

 

 

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