【資産防衛】「ドル・キャリートレード」終焉の影響
アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は今年に入り、債券購入を通じて行ってきた量的金融緩和を、段階的に縮小してきましたが、これが10月をもって終了することになりました。
こうなると、次はいよいよ金利の引き上げがいつになるのか、という点に関心が移ります。とはいえ、イエレンFRB議長は、利上げ時期について「米経済の展開次第」と述べており、いつ利上げに踏み切るのかという点に関しては、言及を控えています。
いずれにしても、量的金融緩和の終了が決定となったことで、今後、マーケットでは米国の利上げ時期を探る展開になるでしょう。これが、資産運用にどのような影響を及ぼすのか、という点を考えてみたいと思います。
量的金融緩和というのは、お札をどんどん刷って、世の中の金回りを良くすることですが、あまりにも多くのお札をすると、国内だけでは到底使い切れず、カネ余り現象が生じます。
米国で生じたカネ余り現象は、米国から新興国への投資を加速させました。たとえば韓国への投資であれば、金利の低いドル資金を調達した後、そのドル資金をウォンに替えて、韓国の株式市場などに投資するわけです。これを「ドル・キャリートレード」と言います。
この段階では、「ドル売り・ウォン買い」の動きが強まり、ウォンは対米ドルで上昇します。ところが、量的金融緩和が終了になれば、徐々に米国国内における資金調達環境は厳しくなってきます。ましてや、利上げに転じれば、金利の低い米ドルで借り入れを行い、その資金を投資に回すという、ドル・キャリートレードの前提条件が崩れてしまいます。結果、これまで積極的にドル・キャリートレードを行っていた投資家が、一斉にドル・キャリートレードのポジションを解消するため、今度は「ウォン売り・ドル買い」の動きが加速することになります。
量的金融緩和の終了と、その後の利上げムードが浮上してくれば、ドル・キャリートレードの投資先となっていた新興国から一斉に資金が引き揚げ、新興国通貨の暴落を招く恐れが生じてくるのです。
●注目したい「新興国通貨を売る」という選択肢
逆に考えれば、そこにリターンを得るチャンスが生まれます。新興国通貨の売りポジションを持ち、暴落したところで買い戻せば良いのです。
ただ、このトレードを行える方法は限られます。外貨預金や外貨建て債券など、外貨建て金融商品は「外貨の買い」からしか取引できません。外貨の売りというと、恐らく多くの人がFX(外国為替証拠金取引)をイメージすると思いますが、新興国通貨のポジションを持つことができるFX会社が限られるだけでなく、金利の高い新興国通貨を売ると、コストが非常に割高になる恐れがあります。
そこで注目したいのが「ブル・ベアファンド」と呼ばれる投資信託です。ある投資信託会社が設定・運用している「新興国為替ファンド」なら、韓国ウォン、インドルピー、トルコリラ、ブラジルレアルを売ることができます。
また、新興国ではありませんが、豪ドルの動きにも注目した方が良いでしょう。オーストラリアは鉄鉱石など資源の輸出を通じて、中国経済と強い結びつきを持っています。したがって中国経済が低迷すれば、それに伴ってオーストラリア経済が落ち込み、豪ドルが売り込まれる事態も考えられます。
ちなみに前回、米国で利上げが行われて新興国通貨が下落したのは、2004年6月のこと。この時、新興国通貨は全般的に大きく調整しましたが、それから半年後には、全般的に買い戻される傾向が見られました。つまり利上げが確定してから半年間が、この手の新興国通貨売りで儲けるチャンスということです。
資産防衛コラム 2014年10月9日付
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