【M&A】株式譲渡と事業譲渡、税金のうえでの比較(2)
株式譲渡と事業譲渡で、異なる譲渡益(キャピタル・ゲイン)
株主譲渡で個人に残る手残り4億1000万円と、法人に残る手残り4億1000万円は同額になりましたが、これは不思議なことではありません。
株式譲渡の結果、個人にかかる税率は20%、事業譲渡の結果、法人にかかる税率は実効税率で36%と税率だけで見ると倍近い差がありますが、譲渡益(キャピタル・ゲイン)が両者で根本的に異なります。
株式譲渡のケースではキャピタル・ゲインは、株式の譲渡対価5億円から株式の取得費5000万円(この例では、オーナー社長が払い込んだ資本金)を差し引いて計算した4億5000万円となります。そして、このキャピタル・ゲインに課税されます。たいして事業譲渡(負債を引き継ぐケース)では、事業譲渡の対価は5億5000万円。ここから資産の譲渡原価3億円を引いた2億5000万円が事業譲渡益となります。この事業譲渡益に法人税等が課税されます。そのため、税率は36%と高いものの、譲渡益の金額が小さいため、税額では株式譲渡のケースと同額となったということです。
事業譲渡で、法人から個人に譲渡の対価を移転すればさらに税金が!
このように、株式譲渡と事業譲渡では、譲渡益の認識のしかたが異なるため、税制上どちらが有利かといったことは一概にはいえません。
ただし、事業譲渡の結果、会社に支払われる対価を個人に移転する場合は、事情が異なります。配当や給与・役員退職慰労金として個人に支払うたびに、個人への課税が行われるからです。
第二の人生のための資金をすぐに使えるか
個人への手残りで比較すると、一般的には株式譲渡のほうが有利になるケースが多くなります。さらに、株式譲渡では、最終契約と同時に対価が個人に振り込まれます。
翌年に個人にかかる所得税と住民税を支払えば、残額は自由に使えるのです。個人への資産移転を前提にした場合、やはりM&Aの売り手としては株式譲渡が好ましいわけですが、買い手の意向によって事業譲渡を選ばざるを得ないケースもあります。
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